SHARINGへのコメント④
鶴田法男 (映画監督『リング0』『予言』『おろち』)
一級の娯楽サスペンス・スリラー映画である本作。
超絶技巧の長回しや、顔のアップのスプリットスクリーン、篠崎監督の卓抜した映像センスの挑戦は、メジャー映画が忘れている映画本来の醍醐味を体感させてくれる。必見!
三宅隆太 (脚本家/映画監督/スクリプトドクター/心理カウンセラー)
これは「あの日」を境に「心の時間」が停止してしまった者たちを描く、「心霊映画」である。命を失い彷徨い続ける者、命を長らえ自らを攻め続ける者、そして、命を共有(シェア)しようともがき続ける者……。
互いを思うからこそ集い、言葉を交わし、だがすれ違わざるを得ない彼らを見つめていくうち、この映画が抱えるあまりにも重く強大な影に、苦しみや恐怖、或いは絶望を感じる観客も少なくないだろう。
しかし、光なきところに影が存在しないように、絶望と希望は紙一重であり、表裏一体でもある。
前作『あれから』に続き、篠崎誠は絶望の影にかき消されそうな「わずかな光」を追いつづける。
そして迷路のような廊下を懸命に走り続けるヒロインとともに、我々観客もまた、その光を信じ、求めてゆくことになる。
行きつく先はどこなのか?そこにはどんな光景が待ち受けているのか?ロング版とショート版という2つのバージョンを通じて、『SHARING』は、それぞれ異なる未来の可能性を観客に提示する。
もしも、あなたがいま何らかの理由で「心の時間」が停止していると感じるなら、どちらのバージョンもご覧になることを強くお薦めする。
そこには「止まった刻」を再び前に進めるためのヒントが隠されているからだ。
そして同時にそれは、この国の長年まとわりつく閉塞感を覆すための重要な道しるべでもある。
塩田明彦 (映画監督『害虫』『どろろ』『抱きしめたい』)
面白かったです。
映画少年としての篠崎誠の最高傑作が『殺しのはらわた』だとしたら、映画作家としての篠崎誠の最高傑作は、やはり『SHARING』ということになるのでしょうか。すでに多くの方が指摘しているのでしょうが、少年篠崎と、作家篠崎がそれぞれ分裂気味に追求してきた映画への向き合い方が、ついにここにきて統合されてしまった、その瞬間を刻々と目撃していくという思いもよらぬスリリングな体験をしてしまいました。
映画の背景には一方にカサヴェテスがいて、もう一方にアルジェントやポランスキー、クローネンバーグ、トビー・フーパー等の監督たちがいて、それが実に平然と共存し、共鳴している。まさか3.11を主題に、こうした映画が生まれ落ちるとは、というのが正直なところところです。
僕は、『あれから』は未見なのですが、もしかするとこの映画の前に、すでに一度3.11を主題にした映画を撮っていることが、「遠くの決定的な出来事」であると同時に「決定的だけど遠い出来事」、その二つの極から波紋として生み出されてくる重層的なうねりとして3.11を捉える視点を、。君に与えたのかとも感じました。
こうしたフィクションとしての枠組み、距離感、うねりの中で「波紋」としての3.11を捉えるとい試みは僕自身、『昼も夜も』という作品で試みているのですが、君の映画はその狙いをより明確に、より包括的に、力強く描きだしている。そこに驚かされもしたし、興奮もしました。