『SHARING』へのコメント②
三宅唱 (映画監督『きみの鳥はうたえる』『呪怨 呪いの家』)
ふたりの女性(山田キヌヲ、樋井明日香)の真顔にとにかく惹かれました。
彼女たちが走ったり立ち止まったりハッと目覚めたり無言で会釈しあったり、そんな一瞬一瞬に何度も息を飲みました。
『SHARING』が傑作だと思ったのはいろんな理由がありますが、とにかくこの主人公たちの発明に震えました。
また、主人公の傍らにユーモラスで優しい男(木村知貴)の姿があることに、なぜかぐっと胸打たれるものがありました。
想田和弘 (映画監督『選挙』『港町』『精神0』)
311後の世界を生きる私たちの不安や困惑を、これほど鮮烈に、重層的に、そして映画的に描いた作品があったでしょうか。
特にロングバージョンには戦慄させられました。
実に怖い映画です。
深田晃司 (映画監督『淵に立つ』『本気のしるし』)
人は、怒りの悲しみも喜びもシェアできない。
分かち合えた気になるだけだ。
分かち合えない私たちは、だからこそ、分かち合えた気になりたくて、誰かに対して手を伸ばす。
分かち合えないことの絶望の果てに、それでも表現する道を選んだヒロインの気高く孤絶した姿は、そのまんま篠崎誠監督の姿のようだった。
ふたりの女性の心の流れを静かに見つめるショートバージョンと、悲しみと怒りが活劇となって世界のルールをぐにゃりと歪めるロングバージョン。
ひとつの撮影からこれだけの印象の異なるふたつの作品が生まれるとは。
モンタージュの底深さ底知れなさを覗き込み目眩がした。
武正晴 (映画監督『百円の恋』『全裸監督』『嘘八百』)
見終えたあと、悪い夢に飛び起きたかのような汗をかいた。
映画が告発する挑戦的な意欲作だ。
万田邦敏 (映画監督『接吻』『この愛のまなざしを』)
失った者の悲しみを分かち合う映画といえば、すぐにイーストウッドの『ヒア アフター』を思い出すし、ともに津波が関わっているのだから、これはもう間違いなくそれを意識して作られたと思うが、『SHARING』が『ヒア アフター』と異なるのは、悲しみを分かち合うことの不可能性を描いている点だ。こんなに残酷なことはないが、その残酷さを自覚した女子学生が津波の被害者を自ら演じてみせるラストの劇中劇は、やはり何事かをシェアしていて、それがたいへん感動的なのだった。